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kirakira na toki

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Cross...12
2007年 02月 13日 |

(フゥー・・・)

何故か、私は姉に言われるままに飛行機に乗り込んだ。
今朝からの出来事を思い出し、何度もため息が出てくる。

「幸、ごめん!あんたに頼んでたの今日だったよね?実は、美柚の体調が悪くってね・・・私は、行けそうにないのよ」
「お姉ちゃん・・・とりあえず予定は空けてあるけれど、どこに行くとも何をするとも聞いてないんだよ」
「あっ!そっか・・・えぇと、東京に行って来てくれる?」
「・・・・・・」
何を言ってるの?何か隣町に行って来て!みたいに軽く言ってるし・・・呆れて言葉も出ない。




「ちょっと聞いてる?午後からの便だから、空港までは何とかするわ・・・チケット届けるからね。じゃあ、12時に空港で!カメラも持ってくるのよ!」
「えっ?えぇ~!! 」
もう切れてしまっている携帯電話に、八つ当たりしたくなってきた・・・

2つ年上の姉の美紀は、私が東京に行っている間にできちゃった結婚していた。
もうすぐ2歳になる一人娘・・・私から見れば姪っ子の美柚と二人暮し・・・
と言っても、10歳離れた義兄は、単身赴任で1年前から北海道に行っている。
その美柚が、風邪をひいたとかで・・・一緒に行けない先は、東京で・・・私は一体・・・東京に何をしに行くんだろう。

とりあえず、姉に振り回されるのに慣れている私は、簡単に1泊分の準備をして空港に向かうことにした。
キッチンにいる母に、一応声をかける。
「お母さん、何だか分からないけど・・・お姉さんから電話で、東京に行って来るから」
「美紀と一緒なの?」
「うぅん・・・美柚が熱出したとかで、私だけみたい」
バタバタバタッ!
「何て言ったの?美柚が熱出したの?」
「うん、そうみたいだよ」
「美柚・・・私は、今夜は美紀の所に泊まるから、電話してもいないからね!」
エプロンを外しながら、慌てて寝室に入ってしまった。
「孫が一番・・・私は、どうでもいいって訳ね・・・」
母の様子に苦笑して「行ってきます!」返事がないのを分かっていながら、声をかけて家を出た。

空港に着くと、入り口の辺りで待っている姉の姿が目に入ってくる。
遠目で見てもイライラしているのが、よく分かった・・・
「幸!遅い!!」
予想していたことだが、いきなり怒鳴られてカチンと来る・・・

「ここに詳細は書いてあるから、飛行機の中で読んで・・・いい?」
「・・・・・・」
「返事ぐらいしなさいよ!」
「何で?何で私が行くの?」
「仕方ないでしょ?美柚が、調子悪いんだから・・・」
姉はというと、何を当然のことを聞くのか?という表情をしている。
「・・・で、どこに何をしに行くわけ?」
「うん・・・私の職場の澤田さん知ってるでしょ?」
「澤田さん?うん・・・」
姉は、結婚する前から地方のタウン情報誌に毛が生えたような本を出版している会社・・・で編集の仕事をしている。
・・・編集者とは、名ばかりで企画して取材して原稿を書いて・・・とにかくそんな仕事をしている。
澤田さんは、そこで編集長をしている女性だ。
「その澤田さんが、昔・・・勤めていた大手の出版社だか何だかの人に頼み込んで、取材を取り付けてきたの。なのに・・・先週から、盲腸で入院しちゃって、行けなくなったのよ」
「盲腸って、今時・・・・・・」
「そうなのよ!迷惑な話でしょ?この取材のために、ずっと痛いのを我慢してたらしいわ。何かあったら行けなくなるって・・・まして入院なんて、と思ってたら腹膜炎を併発してて、即手術になったって」
「・・・・・・」
「私が代わりに行くつもりだったんだけど、美柚がね・・・」
「代わりって、東京に美柚ちゃんを連れて行くつもりだったの?」
「まさか!その時は、あんたにでも頼もうと思ってたわよ」
・・・どっちにしても私か・・・

「何か言った?」
かばんの中を探っていた姉は、封筒を出して私に手渡した。
「これ、会社からの出張費と澤田さんからの特命書・・・」
「特命・・・書?」
「そう・・・弱小出版社だから、手当ては少ないわよ。あとで、領収証を回してくれれば何とかするわ。それから、特命書は着いてから見て!」
「うん・・・」
「じゃあ、健闘を祈る!!」
そう言い残して、姉は走り去った。
「お姉ちゃん、お母さんが行くって言ってたよ!」
・・・やった、ラッキー♪
振り返った姉は、一際嬉しそうな顔で言った。
母が行くと、姉は楽が出来る・・・そう踏んでいるんだろう。

ぼんやりと、今朝からのことを考えていた私は、ふっと思いだした。
(そうだ・・・詳細を読んでおけって言ってたな)
姉から渡された書類を開くと、目に飛び込んできたのは・・・
取材・撮影・・・・の文字。
(取材って何?撮影って?もしかして、雑誌の・・・1人で全部やれってこと?)
続きに目を通すと、取材の内容は書かれてあった。
その通りに進行すればいいらしい。
とりあえずひとつは解決した・・・でも撮影って。
私は、いつも風景とか動物しか撮っていない。
もしかして人物?やっぱり屋内だよね?
どうしよう・・・・・・まぁ、いいか。
今更あわてたってどうしようもないし、なるようになれってことだよね?

久しぶりの東京・・・・・・今は、楽しいことだけ考えよう。
着いてからも、時間までには少し時間がある。
18時までにKホテルに入れば、十分だから・・・麻里に、連絡してみてもいいな。
書類の文字に目を落としながらも、私は、少しずつワクワクしてくるのを感じていた。
by pink_pink_opal | 2007-02-13 17:37 | Cross |