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kirakira na toki

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Crescent... epilogue ...進むべき路...
2007年 01月 19日 |
彼の手で、すべてを剥ぎ取られ・・・私は生まれたままの姿に戻った。
「・・・きれいだ。君の全部を覚えていると思っていたけど…」
「何?・・・」
何も言わない彼に、不安が募る。
「・・・俺の記憶の中の君より、今…目の前にいる君は、もっときれいだ」
「・・・・・恥ずかしいから、そんなに見ないで」
背を向けようとする私を制するように、彼が強く肩を掴んだ。
「いやだ・・・ずっと見たかった。こうして触れて、君の肌がピンクに染まる所を、もう一度この目で見たかった・・・」
彼の熱い瞳に魅入られながら、私は胸に秘めていたことを彼に告白した。

「・・・私は、忘れようとした。もう、逢えないのなら…あの日の自分も、あなたも…すべて忘れてしまいたかった」
「・・・忘れられたのか?」
「見て分からない?」
「・・・・・・」
彼の目元に、指を当てた。
「あなたの瞳の中に、私がいるわ…あの夜のように・・・・・・もう忘れなきゃって思う心の裏で、ずっとこんな日が来るのを夢見てた。でも、そんな気持ちに気づかないふりをしていたわ…辛いから・・・叶わない事だからって」
「玲那・・・」




彼に愛されなからも、唇が自由になる時は、逢えない間の空白を埋めるようにずっと話し続けた。
「あなたは、あの短いソウルでの日々…ずっと幸せをくれた。なのに、私はこれから…あなたに何もあげられない。うぅん、それどころか…きっと、あなたから大切なものを奪ってしまうもの…」
「・・・・・・」
「あなたはスターで、たくさんのファンがいる。なのに、もしも私といたら・・・?私はあなたの、足かせでしかないんだよ」
「玲那、もう黙って・・・」
彼は再び、私の唇を覆うように深く長いキスを繰り返す。

甘いキスの途中…急に動きを止めた彼が、ポツリと言った。
「もしもすべてを失うことになってしまったら…そう考えると、本当は俺だって怖い。でもそんなものを補って余りあるもの・・・君を・・・今は玲那を失うことが怖い・・・あの日、俺は仁川空港まで行ったよ」
「えっ?」
「何もせずに、ただ忘れて…諦めるなんて出来なかった。結局、君には逢えなかったけれど…あの日、空港に行かなきゃ…俺は前に進めなかった」
「あの時の私は、あなたの気持ちからも、自分の気持ちからも逃げたの。あなたを自分だけの物にしたいって…そんな考えを持った自分が怖かったから。もう一度、人を愛するのが怖かった…だから逃げ出したかった」
「・・・・・・もう、逃げたりしないよね?」
私は、自分の指を彼の長い指に絡ませた。
「・・・ねぇ、どこに逃げるって言うの?ここは日本なのに…もう逃げて帰る場所なんてないもの…」
大切なものにはじめて触れる時のように、微かに震える彼の指先は、私の体中を這い回る。
見られること、彼の指で触れられること…すべてが、怖いほどの快感を連れてきた。
私の体の中心が、ただ彼からもたらされる愛撫に、応えたくて溢れて震えている。
いつの間にか、触れられるのを待ち望んでいる私の胸の頂に、彼の唇が触れた瞬間…私の体は激しく反応してしまった。
(好きな人に触れられるって、こんなに気持ちいいものだったのか・・・)
彼の瞳に見つめられる恥ずかしさに身もだえしながらも、優しく激しい愛撫の訪れを、私は体中で待ち望んでいる。
両足を押し広げるように、彼の膝が分け入ってきた時には、ただただ彼とひとつになれる瞬間を待っていた。
ゆっくりと彼が私の中に進むたびに、体が溶け出しそうなほどの快感が襲ってきた。
少しだけ苦しそうで、それでいてウットリしたような彼の表情に、痺れるような快感は加速度を増していく。
「んっ・・・あぁっ・・・」
与えられる悦びによって漏れる吐息も声も、今夜は止めない。
私は、私のすべてで彼からの愛に応えたかったから。
彼と私の熱い息づかいで満たされていく、この部屋の中で、彼と身も心もひとつになれる悦びに浸っていた。
「玲那・・・愛してる」
「・・・・・・」涙が溢れてきた。
「玲那・・・・・・?」
「私も…愛してる。ずっと、あの日から…あなたを愛してた」
そう呟き、一際奥深くに彼が辿りついた感覚に体が震えた瞬間、私の体はエクスタシーという深い海の中に沈んでいった。


「ねぇ、明日も早いんでしょ?もう寝なくちゃ・・・」
「だめ・・・1年も、俺を待たせたんだから離さない」
こんな事を言う彼は、少し子供の表情を見せた。
「でも・・・・・・」
「でも…は、なしって言っただろう?」
「あなたを待っている人がいるのに、一番ステキなあなたでいなきゃ・・・」
「・・・・・・」
「どうしたの?」ニヤッと笑う彼を、不思議に思って聞いてみた。
「ん?明日は玲那も連れて行く」
「えっ?」
「もう、君を1人置いていくのは嫌だ。あんな思いは、二度とゴメンだから…またいなくなりそうだし・・・」
「明日は取材と、夜には試写会もあるけど君も、一緒に行くんだよ」
「・・・無理」
「?!どうして?」
「だって仕事があるし、それに・・・明日は、あなたとファンの大切な日だもの」
「君だって、俺のファンだろう?そう言えば、玲那はどうしてファンクラブに入ってくれなかったの?君が日本に帰ってから、すぐ入会してくれていたら、こんなに苦労して探す事だってなかったはずなのに」
「・・・・・・」
「答えないと、今夜はずっと離さないから」
再び私の体に指を這わせ始めた彼に、慌てて言う。
「・・・だって、私はあなたのファンじゃないもの」
「えっ?」絶句して言葉を失う彼に、微笑みながら続けた。
「私は、俳優イ・ビョンホンのファンじゃない。私は・・・」
「・・・何?」
「ただ知らない人のまま、あなたを好きになった。何も持っていない、そのままのあなただから愛したの…」
しばらく考えてから、ゆっくりとうれしそうな笑みを浮かべた、そんな彼がやっぱり好きだ。
「俳優イ・ビョンホンのファンには、ならない?」
「なってもいい?もしもファンになったら、あなたはミンチョルにもスヒョンにもソヌにも、テプンにだってやきもち焼かなくちゃいけなくなると思うけど…」
「えっ?」
「だって、どの役も…すごく素敵だし好きだもの」
「う~ん、それも困る・・・・・・」
そう言って、複雑な顔を浮かべる彼に、私は噴出してしまった。

「玲那、笑ったね。君の笑顔が、一番見たかったよ。そうやって声を上げて笑う君を・・・」
「・・・・・・」
「これからは、もっと見せて…いつも君の笑顔を見ていたいから」
私は答える代わりに、彼が一番見たかったという笑顔で、彼の頬にキスをした。

彼が日本にいる間、私たちは出来る限り一緒に過ごした。
最後の夜、スタッフの人たちとの食事の席で、彼が私を気づかうように囁く。
「玲那、気分が悪いの?」
「うぅん・・・大丈夫よ」
「でも、顔色がよくない…疲れてるなら、部屋で休もうか?」
心配そうな素振りなのに、口元に笑みを浮かべて覗き込んでくる彼を、軽くにらみながら、耳元で囁く。
「部屋に帰ったら、またあなたは私を離してはくれないんでしょう?そしたらきっと、明日の朝まで休めないもの・・・」
一瞬だけ私の囁きに慌てた彼だったが、次には、大きな声を上げて笑い出した。
「ちょっと・・・どうしたの?」
「確かに、その通りだから・・・」魅惑的なウインクをしてみせる。
「もう・・・・・・・」
彼の肩をぶつふりをして、私たちは、ふざけ合っていた。

しばらくすると、彼は席を立ち、近くにいたスタッフの1人に声をかける。
もう私にとっても、顔見知りになったスタッフの彼が、絶句しているように見えた。
「さぁ、部屋に行って休もう・・・」
「ちょっと、ここは?帰っちゃっていいの?」
「いいんだよ」言って、私の手を掴みどんどん歩き出した。
「ねぇ・・・さっきの彼に、何て言ったの?」
「どうして?」
「何となく変な感じだったから・・・」
「・・・玲那が俺と離れても平気なように、彼女の体に俺を刻み付けてくるって」
「えっ!!うそっ・・・」焦った私は、スタッフを振り返って転びそうになる。
そんな私の体を受け留めながら、ニヤリといたずらな笑みを浮かべる彼。
「冗談だよ・・・」


成田空港から一緒に戻った三沙子は、まだ興奮が抑えきれないという表情をしていた。
「玲那、本当に良かったの?」
「何が?」心地良いまどろみに包まれながら、答える。
「彼と、一緒に行かなくて…本当に良かったの?」
「うん?」
「だって、せっかく思いが通じたのに・・・こんなドラマみたいなこと、本当にあるなんて…信じられないよ。なのに・・・」
三沙子は、手に持った彼からのプレゼントや、サイン色紙に目をやりながら呟いている。
「Dear.MISAKOだって・・・嘘みたい」
「何枚でも書くって言ってたけど、そんなに要らないよね?」
「玲那~~~ありがとう」三沙子に抱きつかれながら、私は姿勢を正して言った。
「三沙子がファンクラブに入ってくれたから、逢えたんだって感謝してた。私からも・・・ありがとう。三沙子がいなかったら、彼には二度と逢えなかったよ」
「じゃあ、どうして一緒に韓国に行かないの?」
「・・・・まだまだ、考えなきゃいけないことがあるから。両親のこともあるし、国際結婚なんて私たちだけの問題じゃないもの」
「そうだけど・・・」
「大丈夫よ、ちゃんと彼も私も考えているから…二人の未来のことを。そうだ!今度、一緒に逢いに行こうね」
「えっ?私もいいの?」
「もちろんよ」
うれしそうな三沙子を見ながら、彼との別れの場面を思い出す。

空港の駐車場に停めた車の中、私たちはみんなの厚意に甘えて二人だけの時間を過ごしていた。
「なぁ…玲那、やっぱり一緒に行こう」
「・・・・・・」
「どうして?愛し合えているって分かってるのに、何で離れなきゃいけない?」
「それは…あなたと私だからよ」
「何?」
「いっぱい考えなきゃいけないこと、やらなきゃいけないことがあるもの・・・だから、もう少し私は私で、あなたはあなたで…自分のことを大切にしようってこと」
「・・・良く分からない」
「これからきっと、すごく大変なことばかりだから…どんなことも乗り越えられように、ちゃんと足場を固めて強くなりたいの」
「・・・・・・」
「次に逢う時には、私もあなたの日本語みたいに、ちゃんとハングルを話せるようになってるから…」
「・・・じゃあ、俺は、自分の仕事で頑張るよ。それでいいんだろう?」
「うん!」
「・・・三沙子さんが言った意味、分かってきた…」
「何?何のこと?」
不思議そうな顔の玲那を抱きしめて、彼女の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
か弱くて、守ってやりたいと思う時もあるけれど…こうして、俺を奮い立たせるほどの強さを持つ女性(ひと)。
ひとつ彼女を知るたびに、どんどん彼女に堕ちて行くのを感じる。
不思議だけど心地いい気分だった。

「ちゃんと、次がある別れなんだから・・・泣かないからね」
「・・・・・・玲那、愛してる」
彼の言葉を胸の奥に、彼の瞳をまぶたに刻みつけようと、閉じた瞳からは涙がこぼれていた。
「泣いてないから・・・」
時折、そばを通りかかる車のライトを受けて、玲那の頬を煌きながら涙が伝う。
(美しい・・・・・・)
ビョンホンは、玲那のきれいな涙も、その涙の味も胸に深く刻みつけた。

震える玲那を抱きしめながら、昨夜、ホテルの部屋の窓ガラス越しに2人で見た満月を思い出す。
丸く優しい光を放つその月は、ずっと欠けていた二人の心が、やっとひとつになれた姿のように見えた。
仄かに黄色く、ふんわりとした月の光が満ちる部屋の中・・・
すぐそこまで迫っている、しばしの別れを打ち消すように、ビョンホンと玲那は眠ることを惜しんでお互いを求め合った。


「玲那、待ってるから…早く韓国においで・・・」
嗚咽を堪え、うなづく玲那に思いを込めた別れのキスをする。
深く深く、玲那の唇に自分を刻み付けるような、そんなキスだった。

優しいキスを繰り返しながら、いつか訪れるであろう…明るい未来に、二人は思いを馳せていた。

        ≪Fin≫




 

『...Crescent...』  あとがきです

とうとう、終わりを迎えました。
ちょっとした息抜きのつもりで書き始めた、この創作でしたが…
いつの間にか、自分を玲那に重ねてみたり・・・
どんどんストーリーが湧き出てきました。
 「楽しみです・・・」
そう言っていただく言葉を励みに、私なりの言葉を書き連ねました。
今夜は、新月。
残念ながら、ストーリーの中に出てくるような満月ではありません。
この創作文は、もともと
「Crescent…三日月」から「full moon…満月」へ
欠けていた二人の心が、まぁるく満月のようにひとつになる夜
っていうイメージで書き始めましたから。
本当は、もう少し早く満月の夜に終る予定でした。
少し強引な投げ技ではありますが・・・・・・
天体をも変える(?)創作文ということで・・・
スケールが大きいですね(汗)

不快な所、意味不明な所・・・多々あると思いますが、初心者の創作・・・と笑って大目に見ていただければ幸いです。
ずっと、私の拙い創作を読んで下さってありがとうございました。
玲那とビョンホンの幸せを祈りつつ、
ここでお逢いできたみなさんに、たくさんの感謝を込めて・・・・・・

ps...またいつか別の創作で、お会いしましょう~

chiroparo* 1月19日

by pink_pink_opal | 2007-01-19 22:38 | Crescent |