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2007年 07月 07日
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「おかえりなさい・・・」
「ただいま・・・ハルカ」
「・・・何?」
「うん・・・ここでこんな会話するなんて、考えてみたこともなかったから・・・」
「そうなの?」
「何か、照れくさいよ・・・」
鼻筋を、人差し指で掻きながら、私よりずっと背の高い彼が、上目遣いで私を見ている。
「私も・・・おかえりなさいって言う時、ドキドキしたのよ」
「なぜ・・・?」
「あなたが帰ってくると思うと・・・すごく困ったわ」
「困る・・・?」
「嬉しくてたまらないのに、何だか恥ずかしくて・・・」
「恥ずかしい?・・・どうして?」
真面目な顔で、首をかしげている彼を、すごく意地悪だと思った。
「ねぇ、何で恥ずかしいの?」
「・・・絶対に、言わない!」
彼は本当に意地悪だ。
今日、この部屋でひとり・・・
どこへ行っても、自分と彼の痕跡見つけて、どれほど恥ずかしい思いをしただろう。
はじめて、男の人を自分から求めていた・・・自分。
今でも信じられない思いなのに。
その事実から、目をそむけるつもりはないけれど・・・
先に玄関からリビングに通じる廊下を、スタスタ歩く私に、猫なで声の彼がしつこく問いかける。
「ねぇ・・・どうして?ハルカ?」
「もう、言わないって言ったでしょう?」
分かって聞いているのか?
それとも気づいていないのか?
ポーカーフェイスの彼に、いつも翻弄されている・・・でも、
覗き込んでくる彼の表情がおかしくて・・・つい笑いがこみ上げる。
「あっ・・・」
リビングのドアを開けた途端、彼が声をあげて立ち止まる。
「何?」
振り返った私の目に飛び込んできたのは、彼の笑顔・・・
「いい匂いだ・・・」
「えっ?」
「ハルカ・・・何?」
「昼間・・・キッチンで昼食を作ったの。それでね・・・午後から、すごく退屈で・・・
買い物に行っちゃった」
「・・・・・・」
「キッチンには、調味料がしっかり揃ってるのに・・・簡単な食材しかないでしょう?」
「あぁ・・・オモニが、僕がここに長く泊まってる時、料理作りに来てくれることがあるから・・・」
「そうだったの・・・あっ!あのね、大したものは作れないんだけど、一緒に・・・
ご飯食べたいなぁって思ったの」
「これ全部、作ってくれたの?」
「・・・そんな驚くようなもの、作ってないよ・・・」
急に恥ずかしくなってきた・・・こんなに喜んでくれるって分かっていたら、もっとちゃんとしたものを作ったのに。
「食べようか!」
「手を洗わなくちゃ・・・ね?」
「うん・・・」
スキップでもしそうな勢いで、手を洗いに行く彼に、笑いがこみ上げてきた。
「これは?」
「うん・・・お魚を買ったんだけど、とれがどんな調味料か分からなくて・・・」
「美味い!美味しいよ、ハルカも食べて・・・」
「こっちは?」
「それは、ありあわせの野菜でサラダを作っただけ・・・」
「こっちのは?」
「うん・・・・・・」
「ハルカ?」
次々に料理に手を伸ばしていた彼が、顔を上げた。
「お母さんが、良く作ってくれていたの・・・」
「ハルカのオモニ?」
「うん・・・私が好きだからって、よく作ってくれたわ」
「ハルカのオモニの味なんだね?」
「えぇ・・・なるべく近づけたつもりだよ」
スプーンですくっても大きく開けた口に運ぶ。
「・・・・・・」
「・・・・どう?」
「・・・・・・」
「美味しいに決まってるだろ?でも・・・」
「・・・何?」
「何だか、チゲみたいだって思って・・・」
「そう?でも私も・・・韓国に来て、そう思ったの・・・」
「でも、そんなに辛くない。美味しいよ・・・」
ニッコリ笑って、お皿を空っぽにしていく彼の食べっぷりに、少し驚きながら、私も食べ始める。
彼と・・・
いつも母が作ってくれた料理を食べるなんて、夢みたいだと思った。
「このスープね、元気がない時に、いつもお母さんが作ってくれていたの。温かいスープを一口一口飲むうちに元気が湧いてくるようだったの」
「そう・・・でも」
「・・・何?」
「僕は、今でも元気だけど・・・これ以上、元気にしたい?」
「えっ?元気じゃいけないの?」
その意味深な笑みに、私は、やっと彼の意図することを理解した。
途端に頬が熱くなる・・・
「ねぇ・・・?」
「もう!文句がある人は食べなくてイイ!」
「いや・・・食べるよ!怒っちゃったの、ハルカ?」
「怒ってない!」
「すごくお腹すいてるんだ・・・食べていい?今日は昼もコーヒーだけだったし・・・」
「えっ?じゃあ、朝も昼もなし?」
「うん・・・半分は、ハルカのせいだけどね」
「どうして・・・私?」
「だって・・・その・・・朝、僕を誘惑したじゃないか」
「私が?誘惑?!」
「うん・・・それでつい・・・だから遅刻しそうになって、朝食抜きだったろ?」
「ごめんなさい、でも・・・」
「あっ・・・誘惑してないって顔してるね?」
「してない・・・よ」
「・・・じゃあ、今は?」
「・・・・・?」
「実はね・・・ハルカといると、いつも誘惑されてる気分なんだ」
「・・・・・・」
「今も、体が熱いよ」
そう言って、テーブルの上の手に熱い手のひらを重ねてくる。
昨夜から感じていた思い・・・
・・・彼といると、何もかも忘れて、肌を重ねていたくなる。
ずっと、そんな思いを抱いていた・・・
彼にも、同じ思いでいて欲しいと思っていた。
そして今、気持ちが重ねあわされた気がする。
うれしくて、照れくさい・・・不思議な気持ち。
彼といると、何度もそんな気持ちになるの。
「おかしいなぁ。誘惑されていないなら・・・」
「うん?」
「・・・今夜はふたりで、いっぱい話して過ごそうか?」
「・・・そうだね・・・」
「ハルカ!!それでいいの?」
「だって・・・また食事抜きじゃ、体に良くないもの・・・」
「・・・平気なのか、それで?」
沈む気持ちを隠しながら、私は、笑顔で言った。
「・・・うん」
「ふぅ~ん・・・」
納得がいかない・・・そんな表情の彼だったが、また食事を始める。
その後も、他愛もない話題で笑いあいながら、私達は食事を続けた。
彼の笑顔と、楽しげに話す声。
こんなにも楽しくて・・・
こんなにも心が弾むのに・・・
なぜだか、幸せすぎて怖くなる。
「ハルカ・・・」
「ん?」
食事の後片付けを手伝ってくれながら、彼が覗き込んでくる。
「元気ないね?」
「そう・・・そんなことないと思うけど」
「・・・ならいいんだ」
「・・・・・・あの」
「・・・・・・あの」
同時に話しかけた私達は、微笑みあった。
「帰りに、車の窓から見えた・・・今日は、星がきれいだったんだ」
「本当?」
「あぁ・・・後で一緒に見ようか?・・・シャワー浴びてくるよ・・・」
「うん・・・」
私の肩を、ポンポンと軽く二度叩いて、シャワールームに消えていく。
・・・もしかして、私の気持ちが分かっちゃったのかな?
複雑な気持ちだった・・・
幸せなのだから、それに浸っていればいいのに・・・
無性に不安で、胸がドキドキしてしまう。
大きく息を吐いて、残りの食器を片付けた。
「フゥーッ・・・ハルカも、シャワー浴びてくるといいよ」
「・・・・・・うん」
私は、時間をかけてシャワーを浴びた。
いくら熱いお湯で流そうとしても、心の中のモヤモヤは大きくなるばかり。
ドライヤーで髪を乾かしながら、自分に問いかけていた。
「どうしてそんな顔してるの?」
「せっかく彼といられるのに・・・」
「そんな顔、見せて良いの?」
何も答えは見つけられない。
重くなる心に、辟易しながらシャワールームを出た。
ドアを開けると、1番に心に飛び込んできた・・・
リビングの床に座ったTシャツの背中に、しがみ付く。
「どうした?」
いつもの穏やかな声が、彼の背中を通して響いてくる。
「なんでもない・・・」
「・・・・・・」
「こうして居たいだけなの・・・少しだけ、こうしてて」
「うん・・・」
「・・・幸せなの、こうしているとすごく・・・」
「うん・・・」
「・・・なのにね、不安で寂しくなる。どうしてなんだろうね?」
私は、またため息をついていた。
「・・・・・・」
「キャッ!」
彼は、私の体を支えながら、背中に乗せたまま立ち上がった。
「ダメ!降ろして」
「大丈夫だよ・・・しっかり掴まっていれば」
観念した私は、彼の背中に身を委ねた。
彼は、バルコニーへと続く戸を開ける。
ひんやりとした空気と、彼の香りに包まれて心がチクチク痛んだ。
「ほら、見て・・・」
「星・・・・・・」
「夜景にも負けないぐらい、すごいだろう?」
「えぇ・・・」
「ハルカに見せたかったよ。2人で見たかったんだ」
ここで、彼と夜景を見たのが、すごく前のことのように思える。
涙が込み上げてきて、彼に気づかれないように、拭った。
バルコニーに置いてある、ベンチに降ろされる。
「ごめんなさい・・・重かったでしょう?」
涙を隠すように、私はおどけて言った。
「すごく重かった・・・」
「もう!!」
「すごく重くて落しそうで、怖かったよ」
「そんなに重いはず・・・?」
彼の声が震えているような気がして、その表情を伺った。
「不安なのは、ハルカだけじゃないよ。僕だって同じだ・・・」
「・・・・・・」
「だから、こうして一緒にいるんだと思う」
「・・・・・?」
「運命ってあると思うんだ・・・もしも、ハルカが僕のこと気になっていても、仕事とか・・・何か障害があったら、帰ってしまったろう?」
「・・・そうね」
「だけど、君はここに残れた」
「うん・・・」
「この星空のようにたくさんの人の中で、人と人が出逢うなんて、奇跡なんだと思う・・・でも、僕らはこうしてここにいる」
「・・・・・・」
「声が聞ける・・・手を伸ばせば届く・・・僕たちの心を、固く重ねるために、今この時間があるんだよ」
「夢じゃないよね?」
「夢・・・?」
「あなたの傍にいられること・・・日本に帰っても、覚めない?」
「・・・・・・」
彼は、背後に回ってさっき私がしたように・・・私の背中を抱きしめた。
「寂しくなったら、こうすればいい・・・逢いたくなったら、逢いに行けばいい・・・ただ、それだけのことだよ」
少しだけ、心が軽くなった気がする。
不思議な、彼の言葉・・・
「・・・ハルカ?」
「何?」
その声に振り向くと、私の頬に唇を押し当てる。
「こうしたくなったら、すればいい?」
ニヤッと笑いながら、私の顎を引き寄せ、優しく口づけた。
「今日は話そうって・・・」
「そんなこと言ったっけ?でもキスしてても、話せるよ」
魅惑的な笑顔を見せる彼に、身も心も奪われてしまった・・・
何度も何度も、彼と甘いキスを繰り返していた。
「・・・見せつけてやろうか?」
そう言いながら、彼は、私の胸に手を伸ばす。
「・・・誰に?」
驚いて、目を開けると彼の瞳が見える。
彼の瞳には、キラキラと星が煌いていた・・・
「ただいま・・・ハルカ」
「・・・何?」
「うん・・・ここでこんな会話するなんて、考えてみたこともなかったから・・・」
「そうなの?」
「何か、照れくさいよ・・・」
鼻筋を、人差し指で掻きながら、私よりずっと背の高い彼が、上目遣いで私を見ている。
「私も・・・おかえりなさいって言う時、ドキドキしたのよ」
「なぜ・・・?」
「あなたが帰ってくると思うと・・・すごく困ったわ」
「困る・・・?」
「嬉しくてたまらないのに、何だか恥ずかしくて・・・」
「恥ずかしい?・・・どうして?」
真面目な顔で、首をかしげている彼を、すごく意地悪だと思った。
「ねぇ、何で恥ずかしいの?」
「・・・絶対に、言わない!」
彼は本当に意地悪だ。
今日、この部屋でひとり・・・
どこへ行っても、自分と彼の痕跡見つけて、どれほど恥ずかしい思いをしただろう。
はじめて、男の人を自分から求めていた・・・自分。
今でも信じられない思いなのに。
その事実から、目をそむけるつもりはないけれど・・・
先に玄関からリビングに通じる廊下を、スタスタ歩く私に、猫なで声の彼がしつこく問いかける。
「ねぇ・・・どうして?ハルカ?」
「もう、言わないって言ったでしょう?」
分かって聞いているのか?
それとも気づいていないのか?
ポーカーフェイスの彼に、いつも翻弄されている・・・でも、
覗き込んでくる彼の表情がおかしくて・・・つい笑いがこみ上げる。
「あっ・・・」
リビングのドアを開けた途端、彼が声をあげて立ち止まる。
「何?」
振り返った私の目に飛び込んできたのは、彼の笑顔・・・
「いい匂いだ・・・」
「えっ?」
「ハルカ・・・何?」
「昼間・・・キッチンで昼食を作ったの。それでね・・・午後から、すごく退屈で・・・
買い物に行っちゃった」
「・・・・・・」
「キッチンには、調味料がしっかり揃ってるのに・・・簡単な食材しかないでしょう?」
「あぁ・・・オモニが、僕がここに長く泊まってる時、料理作りに来てくれることがあるから・・・」
「そうだったの・・・あっ!あのね、大したものは作れないんだけど、一緒に・・・
ご飯食べたいなぁって思ったの」
「これ全部、作ってくれたの?」
「・・・そんな驚くようなもの、作ってないよ・・・」
急に恥ずかしくなってきた・・・こんなに喜んでくれるって分かっていたら、もっとちゃんとしたものを作ったのに。
「食べようか!」
「手を洗わなくちゃ・・・ね?」
「うん・・・」
スキップでもしそうな勢いで、手を洗いに行く彼に、笑いがこみ上げてきた。
「これは?」
「うん・・・お魚を買ったんだけど、とれがどんな調味料か分からなくて・・・」
「美味い!美味しいよ、ハルカも食べて・・・」
「こっちは?」
「それは、ありあわせの野菜でサラダを作っただけ・・・」
「こっちのは?」
「うん・・・・・・」
「ハルカ?」
次々に料理に手を伸ばしていた彼が、顔を上げた。
「お母さんが、良く作ってくれていたの・・・」
「ハルカのオモニ?」
「うん・・・私が好きだからって、よく作ってくれたわ」
「ハルカのオモニの味なんだね?」
「えぇ・・・なるべく近づけたつもりだよ」
スプーンですくっても大きく開けた口に運ぶ。
「・・・・・・」
「・・・・どう?」
「・・・・・・」
「美味しいに決まってるだろ?でも・・・」
「・・・何?」
「何だか、チゲみたいだって思って・・・」
「そう?でも私も・・・韓国に来て、そう思ったの・・・」
「でも、そんなに辛くない。美味しいよ・・・」
ニッコリ笑って、お皿を空っぽにしていく彼の食べっぷりに、少し驚きながら、私も食べ始める。
彼と・・・
いつも母が作ってくれた料理を食べるなんて、夢みたいだと思った。
「このスープね、元気がない時に、いつもお母さんが作ってくれていたの。温かいスープを一口一口飲むうちに元気が湧いてくるようだったの」
「そう・・・でも」
「・・・何?」
「僕は、今でも元気だけど・・・これ以上、元気にしたい?」
「えっ?元気じゃいけないの?」
その意味深な笑みに、私は、やっと彼の意図することを理解した。
途端に頬が熱くなる・・・
「ねぇ・・・?」
「もう!文句がある人は食べなくてイイ!」
「いや・・・食べるよ!怒っちゃったの、ハルカ?」
「怒ってない!」
「すごくお腹すいてるんだ・・・食べていい?今日は昼もコーヒーだけだったし・・・」
「えっ?じゃあ、朝も昼もなし?」
「うん・・・半分は、ハルカのせいだけどね」
「どうして・・・私?」
「だって・・・その・・・朝、僕を誘惑したじゃないか」
「私が?誘惑?!」
「うん・・・それでつい・・・だから遅刻しそうになって、朝食抜きだったろ?」
「ごめんなさい、でも・・・」
「あっ・・・誘惑してないって顔してるね?」
「してない・・・よ」
「・・・じゃあ、今は?」
「・・・・・?」
「実はね・・・ハルカといると、いつも誘惑されてる気分なんだ」
「・・・・・・」
「今も、体が熱いよ」
そう言って、テーブルの上の手に熱い手のひらを重ねてくる。
昨夜から感じていた思い・・・
・・・彼といると、何もかも忘れて、肌を重ねていたくなる。
ずっと、そんな思いを抱いていた・・・
彼にも、同じ思いでいて欲しいと思っていた。
そして今、気持ちが重ねあわされた気がする。
うれしくて、照れくさい・・・不思議な気持ち。
彼といると、何度もそんな気持ちになるの。
「おかしいなぁ。誘惑されていないなら・・・」
「うん?」
「・・・今夜はふたりで、いっぱい話して過ごそうか?」
「・・・そうだね・・・」
「ハルカ!!それでいいの?」
「だって・・・また食事抜きじゃ、体に良くないもの・・・」
「・・・平気なのか、それで?」
沈む気持ちを隠しながら、私は、笑顔で言った。
「・・・うん」
「ふぅ~ん・・・」
納得がいかない・・・そんな表情の彼だったが、また食事を始める。
その後も、他愛もない話題で笑いあいながら、私達は食事を続けた。
彼の笑顔と、楽しげに話す声。
こんなにも楽しくて・・・
こんなにも心が弾むのに・・・
なぜだか、幸せすぎて怖くなる。
「ハルカ・・・」
「ん?」
食事の後片付けを手伝ってくれながら、彼が覗き込んでくる。
「元気ないね?」
「そう・・・そんなことないと思うけど」
「・・・ならいいんだ」
「・・・・・・あの」
「・・・・・・あの」
同時に話しかけた私達は、微笑みあった。
「帰りに、車の窓から見えた・・・今日は、星がきれいだったんだ」
「本当?」
「あぁ・・・後で一緒に見ようか?・・・シャワー浴びてくるよ・・・」
「うん・・・」
私の肩を、ポンポンと軽く二度叩いて、シャワールームに消えていく。
・・・もしかして、私の気持ちが分かっちゃったのかな?
複雑な気持ちだった・・・
幸せなのだから、それに浸っていればいいのに・・・
無性に不安で、胸がドキドキしてしまう。
大きく息を吐いて、残りの食器を片付けた。
「フゥーッ・・・ハルカも、シャワー浴びてくるといいよ」
「・・・・・・うん」
私は、時間をかけてシャワーを浴びた。
いくら熱いお湯で流そうとしても、心の中のモヤモヤは大きくなるばかり。
ドライヤーで髪を乾かしながら、自分に問いかけていた。
「どうしてそんな顔してるの?」
「せっかく彼といられるのに・・・」
「そんな顔、見せて良いの?」
何も答えは見つけられない。
重くなる心に、辟易しながらシャワールームを出た。
ドアを開けると、1番に心に飛び込んできた・・・
リビングの床に座ったTシャツの背中に、しがみ付く。
「どうした?」
いつもの穏やかな声が、彼の背中を通して響いてくる。
「なんでもない・・・」
「・・・・・・」
「こうして居たいだけなの・・・少しだけ、こうしてて」
「うん・・・」
「・・・幸せなの、こうしているとすごく・・・」
「うん・・・」
「・・・なのにね、不安で寂しくなる。どうしてなんだろうね?」
私は、またため息をついていた。
「・・・・・・」
「キャッ!」
彼は、私の体を支えながら、背中に乗せたまま立ち上がった。
「ダメ!降ろして」
「大丈夫だよ・・・しっかり掴まっていれば」
観念した私は、彼の背中に身を委ねた。
彼は、バルコニーへと続く戸を開ける。
ひんやりとした空気と、彼の香りに包まれて心がチクチク痛んだ。
「ほら、見て・・・」
「星・・・・・・」
「夜景にも負けないぐらい、すごいだろう?」
「えぇ・・・」
「ハルカに見せたかったよ。2人で見たかったんだ」
ここで、彼と夜景を見たのが、すごく前のことのように思える。
涙が込み上げてきて、彼に気づかれないように、拭った。
バルコニーに置いてある、ベンチに降ろされる。
「ごめんなさい・・・重かったでしょう?」
涙を隠すように、私はおどけて言った。
「すごく重かった・・・」
「もう!!」
「すごく重くて落しそうで、怖かったよ」
「そんなに重いはず・・・?」
彼の声が震えているような気がして、その表情を伺った。
「不安なのは、ハルカだけじゃないよ。僕だって同じだ・・・」
「・・・・・・」
「だから、こうして一緒にいるんだと思う」
「・・・・・?」
「運命ってあると思うんだ・・・もしも、ハルカが僕のこと気になっていても、仕事とか・・・何か障害があったら、帰ってしまったろう?」
「・・・そうね」
「だけど、君はここに残れた」
「うん・・・」
「この星空のようにたくさんの人の中で、人と人が出逢うなんて、奇跡なんだと思う・・・でも、僕らはこうしてここにいる」
「・・・・・・」
「声が聞ける・・・手を伸ばせば届く・・・僕たちの心を、固く重ねるために、今この時間があるんだよ」
「夢じゃないよね?」
「夢・・・?」
「あなたの傍にいられること・・・日本に帰っても、覚めない?」
「・・・・・・」
彼は、背後に回ってさっき私がしたように・・・私の背中を抱きしめた。
「寂しくなったら、こうすればいい・・・逢いたくなったら、逢いに行けばいい・・・ただ、それだけのことだよ」
少しだけ、心が軽くなった気がする。
不思議な、彼の言葉・・・
「・・・ハルカ?」
「何?」
その声に振り向くと、私の頬に唇を押し当てる。
「こうしたくなったら、すればいい?」
ニヤッと笑いながら、私の顎を引き寄せ、優しく口づけた。
「今日は話そうって・・・」
「そんなこと言ったっけ?でもキスしてても、話せるよ」
魅惑的な笑顔を見せる彼に、身も心も奪われてしまった・・・
何度も何度も、彼と甘いキスを繰り返していた。
「・・・見せつけてやろうか?」
そう言いながら、彼は、私の胸に手を伸ばす。
「・・・誰に?」
驚いて、目を開けると彼の瞳が見える。
彼の瞳には、キラキラと星が煌いていた・・・
こんにちは。
昨夜、更新する予定が・・・うたた寝してしまい、パソ時間が取れず今になっています。
家族が出かけた隙の、パソタイムです♡
今回の16話も、読んで下さってありがとうございます。
ふたりに甘い時間をプレゼントしました・・・
このままだと、バルコニーで・・・(///▽///)えっ?!
7月7日、今日は七夕ですね。
ここにいらっしゃる、織姫さまたちは、少し遅れて7月12日に
彦星さま逢えますね。
私は、テレビで逢えるかな・・・これは、逢えると言うのかな^^?
私の住んでいる所では、残念ながらSANKEI EXPRESSは手に入れることが出来ません(涙)
でも、いろんなブロガーさんがUPして下さっているので
朝から萌えました。
そして、junoさんおすすめのCREA8月号・・・
いろいろ諸事情がありますが・・・
やっぱり、買っちゃおうかな(汗)
では、良い週末を~(*^▽^)/ chiroparoでした♪
by pink_pink_opal
| 2007-07-07 13:39
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