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kirakira na toki

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Cross...40 ...epilogue...
2007年 05月 09日 |
お待たせしました・・・

悩んで悩んで・・・なのに結局、普通過ぎるラストでした。
Crossを書き始めたのが、1月27日で・・・もう3ヶ月以上かかっちゃったんですね。
何よりも、そのことに一番驚きました。
40話...ラストは、Cross...1話
の導入部分に繋がっています。(繋がっているつもり^^;)

とりあえずハッピーエンドで・・・もう少し書きたいこともありましたが、
本当の本当に(クドイ?・・・笑)最終話です(^▽^)

長らく、お付き合いいただきまして、ありがとうございました♡♡♡ 



季節はまた、ひとつ巡り・・・
日差しが肌をジリジリと焼く季節、夏がすぐそこまで来ていた。

眩しい日差しの中、幸と見上げるほどのダンボール箱の山との、格闘が始まっている。
「積みきれないのは裏の倉庫の一番奥に入れといて!」
ふいに思い出したセクハラ店長の言葉に、イライラが頂点に達していた。

やつあたりして、蹴飛ばしたダンボールにまで馬鹿にされているのか・・・
幸に向かって倒れてくるのを感じて、思わず目を閉じていた。
これでケガをしたら仕事を辞めてやる!
危ないと言うことよりも、幸の頭の中は、そんな考えでいっぱいだった。



クビになったコンビニのアルバイトから、母の友人の紹介で、このドラッグストアに勤めるようになったのは、3ヶ月前だった。
セクハラ店長にも、その店長に媚を売る人たちにも・・・もう、我慢の限界だと感じていた。
たった3ヶ月・・・それで辞めるのは癪に障るけれど、ケガならいい口実だと、そう思っていたから・・・
・・・でも、また逃げるの?
そんな心の声が聞こえてきた。
東京でのこと、彼のこと。
壁にぶつかると、壊す努力もせず逃げてばかりだった自分。
辛いことや苦しいことから目をそむけてたら、ちっとも前に進めないって分かってたはずなのに。
でも、もういい・・・・・・一番大切なものを手放した今、どうなろうと構わないもの。
目を閉じると、一瞬にしていろんなことが思い出された・・・

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ソウルの街並みにも煌く若葉の緑から深緑へと・・・太陽が眩しい季節、初夏が訪れる。

5月の東京ドームのイベントを、無事に終えて帰国したビョンホンは、各種の賞を受賞し、イベントにも積極的に参加するようになった。
あと少しで、映画のクランクインを迎える頃、ビョンホンは意を決して、事務所とそして理事と対峙した。
やっとのことで、幸が離れて行った理由を理事から聞き出したビョンホンは愕然とした。
「どうして?ヒョン?どうしてそんなことを?」
理事は、心の動揺を隠せなかった。
確かに、理事のことをヒョンと呼ぶこともあったが、ビョンホンは、普段からケジメだけは、きっちりつける人間だった。
それほどまでにビョンホンが、彼女のことで混乱するなんて・・・
ヒョン・・・と、そう呼ぶのはプライベートな時、それも内輪だけの酒を交えた席に限ってだったから。
「すべて、俳優イ・ビョンホンの為だった」
理事の感情を押し殺した声に、責める言葉が喉元まで出かかったが、ビョンホンはその言葉を飲み込む。
確かに、こうして幸と離れて冷静にならなければ、いつかきっと彼女を傷つける結果になっていただろう。
ビョンホンは大きく深呼吸し、心を落ち着けてから話を切り出す。
そしてその後、ビョンホンと幸との将来についての話し合いは、明け方まで続いたのだった。

イベントの翌日、帰国するために空港へ向かおうとしていたビョンホンは、思わぬ形で幸の現状を知る事になった。
そして、すぐにでも彼女の元へ飛んで行きたいと思った。
しかし、自分の俳優としての仕事、待っていてくれるファン・・・それらを投げ出したところで、問題は解決するはずもない。
しっかりと足元を固め、幸を迎えに行く・・・そのことがビョンホンの、仕事への情熱を高め、成長させていく。

そんなビョンホンの姿を目の当たりにしていた理事は、自分の考えが間違っていたのかもしれないと・・・最近、感じ始めていた。
ビョンホンからの話は、ちょうどそんな時期のことだったから・・・
理事は目を閉じて、あの日のことを思い出す。

「率直に申します。彼の将来のために・・・離れて頂きたいのです」
「・・・・・・?!」
「このままでは、イ・ビョンホンと言う俳優が消えてしまうことにさえ、なりかねないと思っています」
「・・・えっ?」
「韓国には、彼が日本で活躍していることを、良く思っていないファンがいます。先日・・・日本人女性との噂が週刊誌に取りざたされたのをご存知ですか?」
「はい・・・」
幸がこの噂を耳にする前に、全くのデマだとビョンホンから連絡があった。
そのおかげで、その後、この件に関する記事が週刊誌を賑わした時も驚くことはなかった。

「あなたでないことは調べてあります。あなたは、そんなことをする女性でないことも彼から聞かされています」
「・・・・・・・」
「しかしこの件で、彼へのバッシングの声が高まりつつある。日本人女性との単なる噂だけでこうなんです・・・もしも、あなたとの交際が明らかになれば・・・彼の俳優生命は、絶たれるでしょう」
「・・・そんな?!」
「日本人のあなたには理解できない感情が、今でも韓国人の中には根付いているのです」
「・・・・・・・」
「あなたのことを公表したいと、彼から何度も打診されました。しかし、認めるわけにはいかない・・・分かっていただけますか?」
「はい・・・」
「私達は、俳優としての彼を愛し、そしてすべてを掛けているんです。みすみす、彼を貶めるようなことを認めるわけにはいかない!」
「・・・・はい」
「あなたが日本以外の人であれば・・・こんな事をお願いすることもなかったでしょう」
「・・・彼は・・・この事を?」
「何も知りません。もうひとつ・・・彼には、あなたの方から別れを告げて欲しいのです」
「・・・・・・・」
「どうか俳優イ・ビョンホンを、殺さないで下さい」
「・・・・・・・分かりました。もう、私の方から彼には近づきませんし、連絡も取りませんから」
「ありがとう・・・あなたなら、理解して下さると思っていました。スタッフに成り代わって、感謝します・・・」
「あの・・・」
「何でしょうか?」
「彼が・・・帰国するまで、私に時間を下さい。その間だけ・・・お願いします」
「帰国は、明後日の午前中の便です。帰国後、すぐに仕事が入っていますから・・・」
「ありがとうございます・・・」
「彼には、このことを絶対に言わないで下さい。それが条件です」
「はい・・・」

理事が、幸のことを惜しい・・・と、そう思っていたのは事実だ。
自分を真っ直ぐに見つめ返す、幸の瞳が、今でも脳裏から離れない。
別れないと泣きわめくかもしれない・・・もしかしたら、別れることで手切れ金を要求してくるかもしれない・・・
と、そんなことを思っていた自分を、理事は恥じていた。
突然の話に、最後まで涙は見せず、膝の上で手を握り締めて耐えている彼女の姿に胸を締め付けられた。
一見、弱々しくビョンホンにすべてを依存しているように見えるが・・・
ビョンホンの姿を見ていると、俳優としても人としても・・・彼女はビョンホンを高めてくれる女性だと思える事もあった。
でも・・・あの時期は、彼女が日本人だと言う真実が、すべての道を閉ざしているとしか思えなかったから・・・
あのままメディアから、ふたりの関係が漏れることだけは避けなければならないと・・・そう思っていたのだが。

・・・自分が部屋を出た後、彼女は抑えていた涙をこぼしたのだろうか?
あんな嫌な役目を引き受けたのも、すべてビョンホンのため・・・
そう自分に言い聞かせてのことだった・・・
しかし、いつも心のどこかで、ふたりに対して後ろめたいと考えている自分がいた。
でも、もうこの事に関して、自分が思い悩むこともないだろう。
目の前を歩く、ビョンホンの背中を見つめながら、理事は確信していた。

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ビョンホンは現場へと向かう車の中で、思い出す。
帰国の日...
イベントを終えて心地良い疲労感に包まれながら帰国しようとしていた時に・・・少女と出逢った。
抱き上げた少女は、柔らかく羽のように軽い。
「こんにちは」
ビョンホンの挨拶に、少女は腕の中で、はにかむ様な笑みを浮かべる。
そして、しっかりとビョンホンの首に腕を回しながら、少女は囁く。
「あのね・・・さちおばちゃんが、ないているの。さちおばちゃんがだいすきだから、ないたらいやなの」
「・・・・・・えっ?」
「さちおばちゃんがわらってるのがいちばんすきなの。おにいさんは、さちおばちゃんが、すきですか?」
「・・・・・・あぁ、大好きだよ・・・笑ってる顔が特に好きなんだ」
少女は、満足そうな微笑を浮かべて、言葉を続ける。
「だったらママが、これをよんでくださいって・・・」
そう言って、小さな手のひらに握っていた紙を、ビョンホンの胸ポケットに入れる。
「ありがとう・・・・・・美柚ちゃんだよね?ママは?」
「美柚のママは、あっち!」
指差す方に視線を移すと手を振る女性が見えてた。
その女性は幸に似ている気がするけれど、ふわりとした雰囲気のある幸とは対照的で、ハッキリした顔立ちだった。
しかし、女性のどこかに幸の面影を見つけて・・・ビョンホンの胸が高鳴る。
まっすぐにビョンホンが見つめると、女性は微かに頷いたように見えた。

空港へ向かう車の中、緊張しながら胸ポケットから出した紙を開くと、そこにはビョンホンが捜し求めていたものが書かれていた。
そして・・・
「これ以上、幸を泣かすつもりなら、絶対に許しません・・・」と言う、言葉が添えられていた。

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ビョンホンの腕から、母の腕に戻ってきた美柚は、ニッコリと微笑む。
「美柚、どうだった?」
「さちおばちゃんのこと、すきなんだって!おにいさんいってたよ」
「じゃあ、上手く言えたのね?美柚?」
「ねぇママ、どうしてあのおにいさんは、美柚のなまえしってるの?あったことないのにね」
「幸おばちゃんの好きな人だから・・・きっとおばちゃんから聞いたのよ」
「ママとパパみたいにけっこんするの?」
「そうなるといいんだけれどね・・・」
「あのおにいさんが、さちおばちゃんとけっこんしなかったら、みゆがおよめさんになる!」
「えっ?!」
「パパみたいに、とってもやさしかったの・・・」
「そう・・・美柚、パパとは結婚するんじゃないの?」
「しないよ!さっきのおにいさんとがいいもん!!」
「・・・そう。でもパパが聞いたらショックで倒れちゃうよ・・・ママと美柚の秘密にしようね」
「うん!!」
ふたりは手を繋いで歩きながら、いつまでも他愛ない話に花を咲かせていた。

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(・・・どうして?)
いろんな思いの中、覚悟を決めたはずなのに・・・いつまで経っても倒れてこないことを不思議に思って、俯いたまま恐る恐る目を開ける。
眩しさに細めた視界に入ってきたのは、自分の白いスニーカーと、そして・・・見覚えのあるネイビーのスニーカー。
(これは・・・?)
いつか、あまりにも履き古したスニーカーだったから、なぜ?って聞いたことがある。
「気に入ってるから・・・」
チョコレートケーキを口いっぱいに頬張ったまま、どうしてそんなことを聞くのだろうと、不思議そうな顔で答えてくれたよね?
オッパ・・・・・・

「彼の将来のために・・・離れて頂きたいのです」

顔を上げようとした時、不意に理事の声が耳にこだまする。
「・・・ここは、関係者以外立ち入り禁止ですから」
それだけ言って、その場を離れようとした。
「幸、待って!」
懐かしい声に涙が溢れる・・・
愛しい彼の、低く心の奥まで響くような声に、心は引き戻されていくようだった。
腕を引かれて、胸に飛び込んだ幸は、厚い胸を押し返して抵抗しようとしたけれど、力で敵うはずもなく・・・
抵抗すればするほど、その胸にきつく抱きしめられていった。
「離して下さい・・・」
「幸、どうして?どうして、離れていったの?」
「・・・・・・」
「答えてくれないなら、離さない」
「嫌いに・・・あなたを嫌いになったから・・・」
そう呟いて、幸は涙が溢れるのを感じる。
「それは、本心なのか?本心で言ってるのか?」
「・・・・・・そうです。もう答えたから・・・離して下さい」
ほんの一瞬だけ、腕が緩んだ隙に幸は腕の中から逃げ出した。
これ以上、彼に問い詰められたら・・・心を砕かれるような思いで守ろうとしていた約束を、破ってしまいそうだったから。
「幸!」
何歩も駆けないうちに、手首を掴まれて再び、抱きしめられた。
「・・・ちゃんと、僕の目を見て」
「・・・・・・」
ゆっくりと視線を上げると、深い泉のように澄んだ瞳に出逢う。
その瞳に囚われて、もうダメだと・・・幸は感じていた。
「・・・あなたと一緒だと、疲れる・・・逢いたい時に逢えないのは嫌・・・それから・・・・・・
「・・・幸?もういいんだ。理事からすべて聞いたんだよ」
「・・・?!」
「君が、離れて行った理由を聞いて、どれだけ腹がたったか分かるかい?」
「・・・・・・」
「僕を信じてくれなかったのかと・・・辛かった」
「違うの・・・」
「分かってるよ、君の気持ちは・・・すべて僕のためだってことも。ありがとう」
「・・・・・?」
「君がいなくなって絶望した。でも、今思えば・・・たくさんのことを考える時間を、神様が僕にくれたんだと思う。仕事のこと、君とのことも・・・ね」
「・・・・・・」
「苦しくて何もかも、投げ出してしまいたくなった。でも・・・本当に君の気持ちが離れたのなら、幸せになって欲しいと願うようになった。それが僕の傍じゃなくてもいい・・・どこかで笑っていてくれたなら、それだけでいいってね。でも・・・」
「・・・・・?」
「可愛いキューピットが、ある日・・・僕の前に現れたんだ」
「キューピット?」
「あぁ・・・君の気持ちが離れたんじゃないってことを、僕に教えてくれた。その時の僕の気持ちが分かる?」
「・・・・・・」
「・・・嬉しかった」
「・・・オッパ」
吐息混じりで心の思いを吐き出すような彼が、心からそう言ってくれたのを感じて、幸の胸が熱くなった。
「そう呼んでくれるの久しぶりだね?幸・・・」
「・・・・・・」
「幸?・・・僕と一緒に韓国に行こう」
「オッパ?」
「僕の家族に会って欲しいんだ」
「・・・でも」
「大丈夫だ、オモニには君の事を話してあるから・・・」
俯く幸に、ビョンホンは言葉を続けた。
「きっと・・・僕よりも君の方が大変だと思う。知らない国に来て、知らない人・知らないことに出逢って、きっと戸惑うことばかりだろう・・・それでも一緒にいたい。だから僕は、どんなことがあっても君を守っていく・・・そうしたいんだ。そうさせてくれるかな?・・・」
「・・・・・・」
「そして、僕にも乗越えなくちゃならないものがたくさんある。でも、君となら越えられないものなんてないって、そう思えるんだ」
全身から自信に満ち溢れている彼が、眩しくてたまらない
「・・・・・・」
「・・・幸?」
彼の気持ちが、本当に嬉しかった・・・幸せで、幸は胸が熱くなるのを感じる。
しかし、そんな思いを振り切るように、幸は俯いたまま硬く目を閉じた。
「ダメ・・・だって理事が言ってたもの。私が日本人だと言うことが、あなたの為にならないって・・・だから、あなたの傍にいてはいけないって・・・なのに一緒に行くなんて出来ない」
ビョンホンへの愛に走り出そうとする思いと、留まらなくてはという思いと・・・幸の心は、ふたつに引き裂かれてしまいそうだった。
でも、やっぱり出来ない・・・
愛する人を自分のせいで苦境に立たせることが、分かっていて傍にいるなんて・・・幸には、そんなものが愛だとは到底、思えなかったから。
「幸・・・・・」
「やっぱり、ダメ・・・」
幸は、従業員通路を通って、店内に逃げ出した。
人がいる所なら、ビョンホンがついて来られないだろうと思ったから・・・

「水野さん、もう終わったの?さすが力があると早いよね・・・私じゃ絶対にムリだわ」
「・・・・・・」
さっき店長と一緒にいた八木さんが、そう話しかけてきたが、私は無視を決め込んだ。
「そうだ!水野さんて・・・付き合ってる人、いないって言ってたよね?良かったら紹介しても・・・」
視線は私を通り越して、背後を見つめたまま・・・八木さんが目を見開くのが分かった。
「・・・あっ?2y4-1&%#"(Y!$
目の前で意味不明な言葉を話し、慌てている彼女の姿に期待と不安で鼓動が激しくなる。
そういえば、八木さんが韓国ドラマに嵌ってるって言ってたような気がする。
ぼんやりとそんなことを思い出していた幸は、振り返るより早く、逞しい腕に捕らえられる。
「幸、もう逃がさない・・・」
「オッパ!こんな所で・・・」
「オッパ~?」
八木さんの素っ頓狂な声が店内に響く。
「離して・・・みんな見てる・・・お願いだから」
「もう・・・離さない。今度こそ・・・どこにも行かないと約束するまでは・・・」
「オッパ・・・」
「幸?」
「・・・いいの?辛いって分かってるのに、私なんかと一緒でいいの?」
「あぁ・・・幸じゃないとダメなんだ。どんな辛いことだって跳ね返せばいい。君とならきっと出来るんだから・・・」
抵抗する幸の力が弱まったのを確認して、ビョンホンは彼女の手をとって、歩き出した。

「結婚しよう・・・」
「・・・・・・」
「返事は?」
「・・・待って」
幸は立ち止まり、未だに唖然としている八木さんを振り返る。
「今日で仕事辞めます。店長にそう伝えて下さいね?手続きには、また改めて来ますからって」
「・・・えっ?辞める?何で?!」
隣にいるビョンホンに微笑み、聞き返す彼女に言葉を続ける。

「・・・彼と・・・結婚するから辞めます・・・」

幸の手を握り締めていたビョンホンの手が、ほんの一瞬だけ驚いたように動く。
そして再び、きつく握り締めた。
駆け出しながら、ビョンホンは店内を振り返って微笑んだ。
あまりにも眩しく、甘い微笑に・・・
その場にいたすべての女性は、いつまでも惚けて立ち尽くしていた。

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自分を見上げてくる幸が愛しい。
「・・・本当に大丈夫?こんなことして・・・もしも」
「心配性だな・・・幸は。理事や事務所とも、ちゃんと話し合ったんだ・・・だから大丈夫」
やっとほんの少しだけ、幸は安堵した。
これからのことを考えると、不安がないわけではない・・・
むしろ不安の方が・・・いや、本当は不安で胸がいっぱいだった。
でも、本当に彼の傍にいられるなら・・・一緒に生きていくことが出来るなら、どんなに辛くても大丈夫だと思える。

あなたは、私を守るって言ってくれたけれど・・・
私もあなたを守りたい。
そして、ふたりで幸せになりたい・・・
幸は、ビョンホンの横顔を見つめながら、考えていた。

さっきの幸の言葉・・・結婚すると言った彼女に、ビョンホンの胸が熱くなる。
・・・もう二度と・・・
・・・体は離れても、幸の心だけは離さないと、ビョンホンは心に誓っていた。
きっと・・・幸とふたりで幸せになろうと・・・

ビョンホンは、愛する女性(ひと)の生まれた育った街を彼女と手を繋ぎ、ゆっくり歩いていた。
彼女を育て、慈しんで来た街だと思うと、感慨深い。
初夏の風が、爽やかに並んで歩くふたりの髪を揺らす。
「・・・これから、君の家に寄ってオモニに会おう」
「うん・・・」
「そして・・・明日、韓国に行こう」
「でも、パスポートが・・・」
ビョンホンは、思い出したようにジャケットのポケットを探る。
取り出したのは、パスポート?
幸は、姉に旅行に行こうと強制され、少し前に期限が切れたままになっていたパスポートを更新されられた。
そして、パスポートはお姉ちゃんが・・・預かるって、持って行ったはずなのに?

「可愛いキューピットが、ある日・・・僕の前に現れたんだ」
「・・・お姉ちゃん?・・・もしかして美柚が?」
「君のお姉さんが、僕に渡してくれた」
姉の美紀が、空港で待っていてくれたこと、ビョンホンは、ここに来るまでの経緯を幸に話して聞かせる。
途中で、幸の瞳からは涙が溢れてきていた。
「いいお姉さんだね?」
「・・・・・・うん」
「もう絶対に泣かすなって・・・言われた。幸を泣かせたら、許さないって」
「お姉ちゃん、怒ると本当に怖いんだよ」
幸がクスクス笑う。
白い頬に、綺麗な涙が毀れる。
「泣いちゃだめだよ、お姉さんは怖いって言ったばかりじゃないか・・・」

泣き笑いの幸に、ビョンホンは大袈裟に怖がって見せた。
そんなビョンホンを見て、幸が声を上げて笑う。
口元を細い指で押さえて、いつまでも笑い続けている。
そっと指先を外して、ビョンホンを見上げている艶(つや)やかな唇に口づけた。
いつも、どんな時でも忘れることのなかった・・・甘く柔らかい幸の唇・・・
唇を離したビョンホンが、熱いまなざしで呟く。
「幸のオモニに逢う前に・・・幸の家に行きたい」
「・・・どうして?」
「言わなきゃ、分からない?」
首を傾げたままの幸に、ビョンホンはもう一度キスをする。
今度は、少しだけ深く・・・

そして瞬く間に頬を上気させた、幸の耳元に囁く。
「続き・・・したくならない?」
悪戯っぽく、そして甘く・・・次々に変化するビョンホンの瞳を見つめ、躊躇いながらも、幸はコクリと頷いた。

再び歩き始めたふたり。
その影は、これからのふたりを表すように・・・さっきよりも寄り添い重なっていた。




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最後まで読んでいただきましてありがとうございました♡
感想を聞かせていただけると嬉しいです(^▽^*)


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by pink_pink_opal | 2007-05-09 01:03 | Cross |