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kirakira na toki

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Crescent...
2006年 12月 19日 |
エレベーターのドアが開く。

男の人が、数人乗り込んできた…
聞きなれた異国語に、頬がゆるむのを感じた…
本当に来たんだわ、感慨深く思えた瞬間…
私は自分の耳を疑った。

その声は、あまりにも彼の声に似ていた…
思わず顔を上げてしまうほど、その声の中に悠基が居る気がする。
「悠基…」
私の声帯が1年ぶりに、音を出した。
ねぇ、もっと聞かせて…そう思って、声の主の腕を掴んだ。
悠基の声なのに、どうして呼んでくれないの?
振り返った顔には驚きの表情が浮かんでいる…そう思った瞬間、視界は闇に包まれてしまった。
Crescent..._e0107420_0124835.jpg


私は1年前に、自分の半身を失った。
何もいらなかったのに、ただただ幸せで、2人でいられれば…
それだけで、世界中で一番幸せだと思えた。

そう、あの日までは・・・





「本当に行くの?」
「・・・・・・」
「1人で大丈夫なの?」
「・・・・・・」

三沙子が私の顔を覗き込んでくる。
大きく縦に首を振る。
自信満々なふりをすることには慣れていた。

「心配だなぁ~。ねぇ、一緒に行こうか?あっ!パスポートの期限切れたままだった…」
「・・・・・・」
私はもう一度、今度はゆっくりと縦に首を振った。

「玲那、久しぶりだね。その笑顔…本当に大丈夫ね?」
私は三沙子の肩をポンと叩いて、微笑んだ。
「でも、やっぱり心配だ~外国だよ、言葉だって通じない…なのに玲那、あんたは・・・」
私は荷物をチェックしながら、Ⅴサインを送る。
「玲那、しょうがないわね。誰でもいいから韓流スターに会えるといいね。まぁ、99%不可能だけどね」
呆れたように笑う三沙子。
「気をつけるのよ…」
そうなんだ…私は明日、1人きりで韓国に行く、一大冒険だ。

三沙子は、勤めていた会社で知り合った。
もう5年…まだ5年?私たちは同期入社で、入社当時から何度も衝突した。
第一印象も最悪、仕事上でもライバルで、彼女に対しては、ずっと最悪な印象しか持っていなかった。
そんな私たちが、こうして今も友人でいられるのは…あの日から・・・だったよね。
私は入社4年目にして、大学時代から付き合っていた悠基と結婚し寿退社した。

もともとそんなに長く勤めるつもりもなく、ただ結婚までの暇つぶしみたいに思っていた。
一応、同僚だし…
私は三沙子を披露宴に招待していた。
来ないだろう…
そう思っていたのに、彼女はやって来た。

そして自らスピーチに名乗り出て、どんなことを暴露して私を扱き下ろすのだろう?
そう思った矢先…
彼女はマイクの前で、涙を流していた。
「玲那、私たちはライバルだから…勝手に辞めて、幸せにならなかったら許さない」
そう言った。
たぶん素直じゃない所…私たちは似すぎていたんだと思う。
まるで自分を見ているようで、お互いイライラして…ちょっとした事で衝突をしていたんじゃないかな。

披露宴での彼女の涙が、私たちを急速に接近させていった。
by pink_pink_opal | 2006-12-19 00:41 | Crescent |